彼と私と幽霊の影

携帯を開く、閉じる。

・・・来ない、これで10分。

コレが一般なら「よくあること」で済まされるだろう、だけど私が知るクラサキタカシという男子学生はどんな形の約束であろうと"守ろう"とする性質の男だ、多少遅れるなら間違いなく電話、彼の言葉を借りるなら「"最悪でも"メール」してくる、そういう男だ。

その彼が何の連絡もなく10分遅れている。

これはもう、柄にも無く心配してしまう。

これほど私に似合わないのも中々無いなぁと、軽く自嘲気味に感じつつ、矢張り待つ、そして待つ。

学校では中々のクールビューティーで通っている筈だ、ここでうろたえるのは似つかわしくなかろう・・・。

ただひたすら安心を待つ、何、携帯の電池でも切れたかしたのだろう、大丈夫、彼はそろそろやって来る筈。





そうして彼は私の目の前で死んだ、享年16歳。

トラックと、男子高校生と、即死だった。





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