コバルトブルー


部室で彼女を見た。

独り黙々と、絵を描いている。
随分と集中している様子で、覗くこちらには気づいていないらしい。

絵は蒼海、俗に言う「南の島」のイメージを、正確に抽出していた。
特に変わったところも無く、可も無く不可も無くと言った出来映えの絵だ、隙が無い。

しかし、目が留まる。
何か分からない魅力が、あるようで、ないようで、少しばかり見入ってしまった。



午前の空は青く、それだけで気が滅入った。

大きな用事も無く、ただひたすら、ビル街を歩く。
耳元で鳴るシンバルが、ダンプカーの足音を消していた。



廊下の壁に、青い絵が飾られていた。

佳作、とあるその絵は、俗に言う「南の島」だった。
2度目に見たそれは、何故か不快な感じがする。

夕方の空は赤く、黒板が見づらかった。



地元の海は、なんだか黒く、朝だというのに人気が無かった。

青い空に、入道雲が浮いていた。
ちょうど、あの絵のようで、それだけで気が滅入った。



午後の部室に彼女が居た。

又しても、キャンパスは青かった。
彼女の筆、コバルトブルーの筆跡は、それだけで気が滅入った。



大きな用事もないまま、ビル街を歩く。

青い空に、入道雲の島が浮いていた。



地元の海は、なんだか黒く、夕方ともなると、波の音すらしない。

黒い空に彼女が浮いていた。
それだけで気が滅入る。