天晴


思い立ったように、遠い街へ行く。

此処最近はそうだ、休日の過ごし方、妙だけど、子供心を擽られるというか、なんというか。

冒険心のようなものが、表面に上がってきて、なんだか肩の辺りがザワザワとする、それを体験するためだけに休日を丸潰しにして、知らない街へ出掛ける。



部屋を出て、微々たる距離を歩けば、すぐ駅になる。

徒歩一分と言うわけではないけど、凄く近い、窓から駅は見えないけど。



切符を買う時になって、躊躇するのは何時も通り、中々のコストだ。

紙幣一枚が丸々消えて、私鉄の紫色の切符が、券売機が舌を出すように、べろり、と。

電車は5分後、天気予報は降水確率30%の、多分晴れ。

良い塩梅だ、冒険日和とは、言わないけど。



遠ざかる街は、少々古ぼけていて、霞む。

駅も古いし、ビルも古いし、家も古いし、道も古い。

未だに銭湯が有る位のもんで、やたら中華料理屋が多い、あと他の県には無さそうなコンビニ。



下りの路線は素晴らしく空いていて、物を考えるにはうってつけの環境だった。

カタンカタンと、イヤホンを外した耳に響く。



とりあえず、何処で降りようか、それとも、行ける所まで行こうか。

日は高く、晴天だった。