とりあえず

或る日の事です。

やたら大きな車が、家の前に止まりました。

車の後ろは大きな荷台になっていて、その中から沢山の人間が出てきました。



私は家の前で遊んでいたのですが、何やら忙しそうだったので、邪魔に成らない様に門の影に座っていました。

車から出た人間たちは、何か大きな箱のようなものを持って、次々と家の中に入って、代わりに出て行く人間は、何も持たずに車の荷台に戻っていきました。



しばらくすると、とても偉そうな人が車の助手席から出てきて、お父さんと話しています。

偉そうな人が「これで全部です」と言うと、お父さんは、中に居たお姉さんを呼び出して、「一緒に行きなさい」と言いました。



お姉さんはしばらく駄々を捏ねている様子でしたが、お父さんに何か言われたようで、黙ってしまいました。

それからは、お母さんも、お姉さんも泣いていたので、幼い私はとりあえず涙を流したのです。