公園

待ち合わせにおいて、人間は二つのタイプに分かれる

一つは、早く来て相手を待つタイプ

もう一つは、遅れてきて、相手を待たせるタイプだ





この2つで言えば僕は後者だ、時たま遅れて相手を待たせる場合もあるけど、それは失敗したケースであって、大体少し早めに来て、少し待つ





この日も、僕は勿論待つ立場にある

しかし、少々早すぎた、十分五分位に抑えるつもりだったが、時計を見れば、後三十分はある、参った

コートを脱いで、それをベンチに預けて

僕は、ほう、と息をつく





夏の終わりの膨らんだ空気は既に無く、涼しさは増して少し寒さすら感じる

季節は収束を早めて秋に成りつつあった





ぽこん、と軽い音がして、緑鮮やかなビニール球が飛んできた

足下に転がるそれを、僕は拾ってやる

それと同時に、ベンチの下の本に気付いた、落し物だろうか、それも僕は拾う

声のほうにボールを投げてやって、手に取った本を眺める

ライトノベルの一種だろうけど、詳しいことは僕には分からない、まぁ、暇つぶしにはなるだろう





昼下がりの公園には、様々なようで一定の人間が集まる

遊びに来た子供達と、その母親達、常にお喋りをしているように見えて、その目は子供を離す事は無い、良い事だ

そして散歩する人、又は犬、どんな動物も閉鎖された空間に居るよりか、開放された空間、つまり屋外で日光を浴びて居るほうが、いい表情をする

良い事だ、とても、良い事





少し前の台風を最期に、湿潤な空気は流されて、秋特有の乾いた風が吹いている

酷暑の忘れ形見は、リビングに出しっぱなしにした扇風機ぐらいのもので、今年はかき氷を喰ってないと思うほどに、夏が随分と前のことのように感じられた





コートを脱いだ身体で、日の傾きを肌に感じる

そろそろ帰ろう、待つには十分待った、どうやら待ち合わせには失敗したみたい





拾った本はさして面白くなかった、置いて帰ってしまおう

何も律儀に持って帰ることは無い

どうせ拾い物だ