周回温度 (mixi掲載作)


春。
全てがやんわりと輪郭をぼかし始め、その色に赤みを注す夕日が地平線を逆転させた或る日。

一本の蛇がうねり、平地を揺るがす、その先に鼻先を合わせる一羽の兎、その耳を切り取って額縁にする。





夏。
緑がその真実を取り戻し始めること既に四回、朝日に照らされて乱反射する水玉模様を処女の目が捕まえる。

流れる小川、その源流は宇宙、一瞬の瞬きに揺らぎ、それを写取らんと日がなカンバスに向かう。





秋。
落ち葉堕ち、その後に積もる落ち葉も又広葉樹たる渋さ。
失ったわけではない、その輝きは暖色と寒色に挟まれて、葉脈に延々と刻まれる。

段々と寒くなるとは人の感覚である、この世に温度などは存在せず、それは又人間の感覚も然り。
幻想とは程遠く、真実に近づけば羽を燃される。





冬。
絶対零度の煌きが、山頂の明けに頭を垂れる時間。
それすらも凍る、凍る、凍る。

ゆったりと輝きすら持ち直すか、それでも未だ振り切った温度計は子供の玩具と成り果てたか。

四月の春は遠い。